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東京交響楽団 川崎へ

川崎に根ざす交響楽団を (バイオリニスト 大谷康子さん)

image_topics_03JR川崎駅西口(川崎市幸区大宮町)に7月1日、オープンする音楽ホール「ミューザ川崎シンフォニーホール」(2000席)。大谷康子さんはそのホールをフランチャイズ(本拠地)にするオーケストラ、東京交響楽団(団員98人)のコンサートマスターだ。

現在、楽団の事務所と練習所は東京都新宿区百人町(JR大久保駅北口)にあるが、今後、活動の拠点を川崎にも広げていく。「フランチャイズとはホールの専属オーケストラになること。マイホームに住むという感じです。練習から本番まで一貫して使うことができ、オーケストラが成長するいい機会になります。今使っている大久保の練習所はあくまで練習所で、演奏会場ではありません。練習所も狭く、練習するときは、ひしめき合っています。大編成の曲を練習するときは、他の演奏会用ホールを借りています」

練習と本番で会場が違うことは大きな問題だという。「響きが違うんです。練習のとき、指揮者が楽器間のバランスをとろうといくら頑張っても、本番の会場に行くと音がガラリと変わってしまう」例えば、練習所で音が大きすぎると思い、バランスをとったつもりが、肝心の演奏会場では逆に、音が小さすぎて聴こえないという矛盾が出てしまう、という。
「これまでは当日の演奏会場のゲネプロ(総練習)でしか、この矛盾を調整できませんでした。でも今度は、ホールの残響に乗った楽器の鳴らし方を練習のときから試すことができ、オーケストラの完成度がより高くなると期待しています」

大谷さんはオーケストラ活動のほかに、ソロ活動にも力を入れている。「クラシックファンを増やしたり、地域の人たちとの親交を深めたいと、以前から学校や病院、施設を回って演奏するボランティア活動を続けています。聴衆と一体化することをモットーにトークも入れて親しみやすいように心がけています」さらに「音楽が持っている力の大きさを日ごろ感じています。この素晴らしさで、今の複雑な時代、社会のために少しでも貢献できればと思ってやっています。今後、川崎での演奏会も増え、より神奈川県の人にも伝えることができると喜んでいます。オーケストラとしても地道な活動をして、川崎という地域に根ざしたオーケストラにしたい」

大谷さんが愛用しているバイオリンはストラディバリ、アマティと並ぶ世界三大バイオリン名器の一つ、ガルネリ(1708年制作)。「バイオリンは形など見た目にも美しいので大好き。私のガルネリは300年たった今も”健康”です。どんな大きなホールでも鳴り響いてくれるので、感謝して弾いています。バイオリンはその曲に対する自分の気持ちを代弁してくれます。楽しい音や寂しい音、さらにすごいパワーの音も出るので、バイオリンを通して聴衆と通じ合えると思っています。バイオリンは私のすべてです」
(写真と記事・遠藤 孝さん)