川崎に根ざす交響楽団を (バイオリニスト 大谷康子さん)
JR川崎駅西口(川崎市幸区大宮町)に7月1日、オープンする音楽ホール「ミューザ川崎シンフォニーホール」(2000席)。大谷康子さんはそのホールをフランチャイズ(本拠地)にするオーケストラ、東京交響楽団(団員98人)のコンサートマスターだ。
現在、楽団の事務所と練習所は東京都新宿区百人町(JR大久保駅北口)にあるが、今後、活動の拠点を川崎にも広げていく。「フランチャイズとはホールの専属オーケストラになること。マイホームに住むという感じです。練習から本番まで一貫して使うことができ、オーケストラが成長するいい機会になります。今使っている大久保の練習所はあくまで練習所で、演奏会場ではありません。練習所も狭く、練習するときは、ひしめき合っています。大編成の曲を練習するときは、他の演奏会用ホールを借りています」
練習と本番で会場が違うことは大きな問題だという。「響きが違うんです。練習のとき、指揮者が楽器間のバランスをとろうといくら頑張っても、本番の会場に行くと音がガラリと変わってしまう」例えば、練習所で音が大きすぎると思い、バランスをとったつもりが、肝心の演奏会場では逆に、音が小さすぎて聴こえないという矛盾が出てしまう、という。
「これまでは当日の演奏会場のゲネプロ(総練習)でしか、この矛盾を調整できませんでした。でも今度は、ホールの残響に乗った楽器の鳴らし方を練習のときから試すことができ、オーケストラの完成度がより高くなると期待しています」
大谷さんはオーケストラ活動のほかに、ソロ活動にも力を入れている。「クラシックファンを増やしたり、地域の人たちとの親交を深めたいと、以前から学校や病院、施設を回って演奏するボランティア活動を続けています。聴衆と一体化することをモットーにトークも入れて親しみやすいように心がけています」さらに「音楽が持っている力の大きさを日ごろ感じています。この素晴らしさで、今の複雑な時代、社会のために少しでも貢献できればと思ってやっています。今後、川崎での演奏会も増え、より神奈川県の人にも伝えることができると喜んでいます。オーケストラとしても地道な活動をして、川崎という地域に根ざしたオーケストラにしたい」
大谷さんが愛用しているバイオリンはストラディバリ、アマティと並ぶ世界三大バイオリン名器の一つ、ガルネリ(1708年制作)。「バイオリンは形など見た目にも美しいので大好き。私のガルネリは300年たった今も”健康”です。どんな大きなホールでも鳴り響いてくれるので、感謝して弾いています。バイオリンはその曲に対する自分の気持ちを代弁してくれます。楽しい音や寂しい音、さらにすごいパワーの音も出るので、バイオリンを通して聴衆と通じ合えると思っています。バイオリンは私のすべてです」
(写真と記事・遠藤 孝さん)
大きな眼を輝かせた中野 稔さんとの出会いは、私にとって忘れることのできないものであった。病に負けず作曲に打ち込む姿が衝撃的だったのである。それはちょうど10年前、国立長良病院でのことであった。ここに勤める私の小学校の同級生、河野芳功君が「音楽で社会を明るくしたい、病院にも音楽を届けたい」という私の願いをかなえてくれたのである。そこで、、“音楽が大好き、特にヴァイオリンが好き”という中野さんが、人なつっこい笑顔で素敵な作品「ロンド」の楽譜を下さったのだ。その時以来、私はこの曲を大切に演奏している。「ロンド」を演奏するたびにあの日の中野さんを思い出す。病棟を演奏して回る私の前になり、後になりながら、車椅子でついて回る中野さんは本当に音楽が好きなのだなと感激したものだ。

第8回ゲストは朝岡 聡さん。
今週も水曜日(25日)夜11時30分からは
卑弥呼のリハーサルが始まりました!
エンター・ザ・ミュージック


一連のデビュー40周年記念コンサートを終えて、ソリストとして新たな音楽人生を歩み始めた大谷康子。円熟期を迎え、自らの演奏家としての歩みや信じることを「より深く、よりわかりやすく、より楽しく」聴衆の皆様と分かち合って行きたい、大谷が40年間、あたためてきた音楽に対する想いをお客様に届けたい、その熱い気持ちからこのシリーズがスタートします。クラシックのファン層を広げたいという理念とともにお客様と一緒に築いていく10年がかりのプロジェクト。大谷が大切にしてきた宝物の数々を10回のコンサートで表現します。シリーズを通して、ご一緒に宝さがしを楽しみませんか?
第6回ゲストは押尾コータローさん 再登場!